高齢者が認知症等により判断能力がなくなると、財産の管理や処分などが自分ではできなくなります。

そのような場合のために後見制度がありますが、

●(法定後見の場合)後見人の選任や、

 (任意後見の場合)任意後見監督人の選任手続等にはかなりの日数がかかる

●後見制度は本人の財産の保全(現状維持)を目的としている

●家庭裁判所や後見監督人の監督がある

ことから、不動産その他の財産の売却、担保設定等を行うことは容易ではありません。

 

一方、信託では、

信託財産の売却や担保設定等を、受託者が裁量的判断でできるように定めておくことができるので、

後見制度の場合よりも、時宜にかなった迅速かつ柔軟な対応が可能になります。

 


自宅の管理・処分

高齢になると、自宅の維持管理が難しくなることがあります。

また将来高齢者施設に入居するための資金が必要になったときに、

判断能力が不十分だと、売買契約等が自分ではできなくなります。

 

このような場合に、信託を利用すると、

★自宅の維持管理や、

★必要なときに自宅を売却したり、

★自宅を担保にして借り入れをしたりすることを、

信頼できる人に任せることができます。

 


賃貸物件の管理

高齢になると、認知症等でなくても、

煩雑で面倒な手続きを、信頼できる人に任せたいということがあります。

例えば賃貸マンションなら

★賃貸借契約や建物修繕のための請負契約

★管理会社との管理契約 など

 

このような場合にも、信託を利用することができます。

 


財産の保護

資産のある高齢者は、犯罪者等から財産を狙われるということがあります。

●詐欺等の犯罪行為や不当な勧誘等による被害

●一部の相続人が自分に有利な遺言を書かせたり、お金を無心する、など

 

そのような心配のある方は、財産を信頼できる家族等(受託者)に信託すると、

★不動産であれば、名義が受託者に移り、

★預貯金であれば、信託専用口座に移して管理することになるので、

高齢者は、自分でそれらの財産を売却したり、引き出したりすることができなくなります。

 

このように、信託により財産の名義を受託者に移しておけば、

以後、高齢者が犯罪行為や甘言等によって財産を失ったり、

不公平な遺言を書いてしまったりすることを未然に防ぐことができます

 

 

一方、後見制度の場合、

後見人(法定後見の場合)または任意後見監督人(任意後見の場合)が選任されても、

本人の財産の名義は本人のままなので、

本人が財産を処分したり、預金を引き出したりすることを未然に防ぐことはできません。

後に後見人が本人のした契約等を取り消したりすることは法律的には可能であっても、

実際に被害を回復することは容易なことではありません。