KOBE司法書士法人の相続担当 中川です。
2018年3月13日、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」が内閣より衆議院に提出されました。この法律案には大幅な相続法の改正が含まれます。なんと約40年ぶりだそうです。
現時点では第196回国会において審議中で、まだ詳細は決定していませんが、超高齢社会を見据えた改正といえるのではないかと思います。
今回の改正にはいくつかのポイントがありますが、本日はその中から「配偶者居住権」について、「夫が亡くなって、妻と子が遺産を相続する」という一般的なケースを前提にご説明します。
----------
夫妻は生前、夫名義の家に住んでいました。
夫の死後、夫所有の「家」と「現金」を、妻(母)と子で相続しようとします。
相続にあたっては、相続人同士の話し合いが必要だということは、これまでもこのサイトで
ご紹介してきました。「遺産分割協議」という名前の話し合いです。
今回のケースでは、妻(母)と子で遺産分割協議をすることになります。
妻(母)は「死ぬまでこの家に住みたい」と希望しており、子も妻(母)が家を相続することに
異論はありません。
夫(父)は遺言書を作成していませんでしたので、法定相続分に応じて遺産を分けることになりました。
夫所有の「家」は、大きくは無いものの、交通の便がとても良く、人気のエリアにあるため、
評価額が思いのほか高いようです。
「値打ちが高いのね!」と喜んだのもの束の間、法定相続分に応じて遺産を分けようとしたところ、
妻(母)は「家」の占める割合が多く、現金はわずかしか相続できないことになってしまいました。
「思い出のある家があれば充分」と思っていた妻(母)でしたが、現金がわずかしか
入ってこないことが分かると、老後のことが急に心配になりました。
----------
現在の法律ですと、この事例のように、家を相続することで現金などが相続しづらくなります。
「家」と「現金」、額面上同じ金額を相続したとしても、現金が少なければ生活をしていく上での不安が残ります。
ましてや、現役で働いている世代ではなく、妻(母)のように蓄えで暮らしていく年代の方ならば
なおさらです。
この不安を回避するために、今回の法律改正では「配偶者居住権」の創設が検討されています。
家を「所有権」「居住権」という2つの権利に分離させ、それぞれに評価額を算出するというものです。
所有権を子、居住権を妻(母)として相続することが可能となります。
仮に所有権が子から第三者に渡ったとしても、居住権を持っている妻(母)は家に住み続けることが
できます。また権利を2つに分けてそれぞれに評価額を算出するため、妻(母)が家全体ではなく
所有権だけ相続することにすれば、妻(母)が相続する金額の中での「家」の割合が
下がることになり、相続できる現金が増えることになります。
居住権の評価額の算出方法など課題は残りますが、配偶者が「家」を確保することは
安定した老後の生活への第一歩となります。
順調に法改正されるとして、早ければ平成31年から施行されます。
相続に関する法律は他にも改正される予定なので、注目していきたいと思います。
当法人では、相談者様のお話を丁寧にうかがい、円滑な相続についての対策をたてるお手伝いをいたします。
対策として一番有効なのは遺言の作成です!
遺言作成はKOBE司法書士法人にお任せください。