任意後見

「任意後見」とは

任意後見は、本人に十分な判断能力がある間に、将来任意後見人となる方を契約であらかじめ定めておき、本人の判断能力が不十分になったときに、任意後見人が契約で定められた事務を本人に代わって行う制度です。 任意後見人の職務開始までの手続の流れは次のとおりです。

1 任意後見契約の締結

本人が、将来自分の判断能力が不十分になったときに、任意後見人になってもらいたい人(任意後見受任者といいます。)との間で任意後見契約を締結します。この契約を締結する時には、本人に判断能力が備わっている必要があります。
任意後見契約は、公証役場で公正証書によって行う必要があります。
任意後見契約では、将来、任意後見人に行ってもらいたい事務(後見事務ともいいます。)を定めます。
主な後見事務の例としては次のようなものがありますが、これに限られません。
  1. すべての財産の保存、管理及び処分
  2. 金融機関とのすべての取引
  3. 医療契約、入院契約、介護契約、施設入所契約
  4. 年金等定期的な収入の受領、家賃等定期的な費用の支払
  5. 登記及び供託の申請
  6. 居住用不動産の購入及び賃貸借契約
  7. 要介護認定に関する手続きやサービス利用契約
  8. 行政機関に対する各種証明書の請求に関する事項
  9. 遺産分割の協議等

2 任意後見契約の登記

任意後見契約が締結されると、公証人の嘱託により、任意後見契約の登記(後見登記)がなされます。
後見登記には、任意後見契約で定められた後見事務の内容が「代理権目録」という形で記載されます。
この代理権目録は、任意後見人が行使することのできる権限(代理権)を記載したものです。
将来、任意後見人が後見事務を行うときには、登記事項証明書(法務局で発行されます)により、任意後見人であることや任意後見人の権限を証明することになります。

3 任意後見監督人の選任

認知症等により、本人の判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所に申立てをして任意後見監督人を選任してもらいます。
任意後見受任者など、本人以外の人が申立てをするときは、本人の同意が必要です。(本人が意思表示ができない状態にあるときは、同意は不要です)。
申立てに当たっては、本人の判断能力に関する診断書等、指定された書類を提出する必要があります。
任意後見監督人は、本人のために、任意後見人が職務を適正に行っているかどうかを監督する役割があります。
任意後見監督人が選任されるまでは、任意後見受任者は後見事務を行うことはできません。
任意後見監督人が選任される前であっても、本人の高齢等により任意後見受任者に財産管理等をしてもらいたい場合は、任意後見契約と同時に財産管理等委任契約(この両方の契約をまとめて移行型任意後見契約ということがあります。)をしておくことができます。

4 任意後見人の職務開始

任意後見監督人が選任されると、任意後見人として、後見事務を行うこと(代理権目録に記載された権限の行使)ができるようになります。
任意後見人が行うことができる後見事務は、任意後見契約で定められたものに限られます(この点、法定後見では、後見人が本人の財産管理全般について権限を有するのと異なります)。
そのため、任意後見契約を締結するに当たっては、本人のご希望や生活状況などを踏まえてよく検討し、後見事務に不足が生じることのないように定めておくことが望ましいといえます。
仮に、任意後見契約締結後に、代理権目録に記載のない事務を行う必要が生じたときは、これを代理権目録に追加するための任意後見契約を作成する必要があります。
任意後見人は、財産管理など後見事務の処理状況について、任意後見監督人に定期的に報告し、その監督の下で後見事務を行います。

5 任意後見人の義務

任意後見人は、後見事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮し、本人のために適切な後見事務を行う義務があります。
ライフプラン等
任意後見人が本人の意思に沿って後見事務を行うためには、本人が自分の判断能力が低下した後、どのような生活を送りたいか、療養看護はどのようなものを求めるか、財産管理はどのようにしてほしいか等の希望を、任意後見人がよく知っておくことが必要です。
その希望を本人から任意後見受任者に伝えるために作成されるのがライフプランで、任意後見人はこれを指針として後見事務を行います。
例えば、次のような希望です。
  1. 認知症が初期の状態なら、できるだけ自宅で介護して欲しい。
  2. ヘルパーさんは女性を希望する。
  3. 認知症が進んだり、歩けなくなったりしたら施設に入りたい。
  4. 入りたい老人ホームがある。
  5. 孫に学費を援助しているが、大学卒業までは続けたい。
  6. 兄が亡くなって、自分が相続人になっても、相続放棄したい。
  7. かかりつけの病院は〇〇〇、手術や入院する時は〇〇総合病院で個室を希望する。
  8. 死期を延ばすためだけの延命措置はしてほしくない※。
    ※これは尊厳死宣言と言われるもので、公正証書などライフプランとは別の書面で作成されることも多いです。
任意後見人は、ライフプランの内容を尊重して後見業務を行うことにより、本人の希望に寄り沿った、より適切なサポートができます。

よくある質問、勘違い、注意点

Q1 任意後見監督人について

任意後見契約をしただけで、すぐに任意後見人として後見事務を行うことができるわけではありません。
そのためには、まず家庭裁判所に任意後見監督人(弁護士、司法書士等)を選任してもらわなければなりません。
判断能力が十分でない本人による監督は期待できないので、その代わりに任意後見監督人が任意後見人を監督することになります。

Q2 報酬について

任意後見人に報酬を支払うかどうか、報酬額をいくらにするかは、本人と任意後見受任者との合意により、任意後見契約の中で定めます。
それとは別に任意後見監督人の報酬が必要になり、本人の負担となります。
その報酬額は管理対象財産の額などにより、家庭裁判所が決定します。月額5000円~2万円程度、管理対象財産が5000万円を超える場合は月額2万5000円~3万円程度が目安になるようです。

Q3 本人のための財産管理

任意後見人は、本人の財産を、本人のために管理するのが職務であり、これを自由に使ったりできるものではありません。本人のため以外に使うと、犯罪になることもあります。
任意後見人として責任を持って本人の財産を管理しなければいけません。管理を怠ると、本人から損害賠償請求をされることもあります。
任意後見人が本人のために適切に財産管理等をしているかどうかは、任意後見監督人及び家庭裁判所が監督し、場合によって後見人を解任されることもあります。
本人の財産をどのような目的に、いつ、いくら使ったかなど、財産の管理状況は正確に記録しておく必要があります。そうしないと、本人の死亡後に、任意後見人による財産管理状況をめぐって相続人間で揉めるおそれもあります。

Q4 不動産の売却や購入について

任意後見契約で後見事務として定めておけば、任意後見人が不動産の売却や購入を行うこともできます。

Q5 遺産分割について

本人が相続人になった場合(本人の配偶者が死亡した場合など)、任意後見人は、原則として、遺言がないときは本人の法定相続分、遺言があるときは本人の遺留分を確保しなければなりません。
任意後見人と本人がともに相続人である場合、本人と後見人の利益が相反するため、遺産分割協議に当たっては、任意後見監督人が本人の代理人になります。

Q6 介護・介助等について

任意後見人が行う後見事務というのは、本人を代理して契約等の法律的行為を行うことです。
本人の食事や入浴の介助や介護、掃除・洗濯その他の家事、身の回りの世話、買い物などの事実上の行為は、任意後見人の職務ではありません。したがって、これら行為を代理権目録に掲げることはできません。
任意後見人が行うのは、本人がそれらのサービスを業者から受けられるようにするために必要なサービス利用契約や利用料の支払いなどの法律的行為をすることです。

任意後見について当法人がサポートできること

任意後見契約等の締結に当たっての助言、提案など

本人の生活状況やご希望等を伺い、また、後見制度やその手続き等について必要なご説明をするなどして、本人がご自身の療養看護、財産管理等のために必要かつ最適な方法を選択できるよう助言、提案をいたします。
任意後見契約のほか、ライフプランや見守り契約、財産管理等委任契約等についても、助言、提案をいたします。
また、任意後見契約公正証書の作成に当たって、契約書案の作成や必要書類の説明や準備、公証人との連絡調整などをサポートいたします。
なお、任意後見契約の公正証書を作成するには、公証人が必ず本人と面接し、本人の意思確認等をしなければならないことになっています。本人が高齢・病気等のため公証役場に出向くことができない場合は、公証人がご自宅等に出張します。

任意後見人への就任、後見事務の遂行

当法人が本人と任意後見契約を締結し、任意後見人として後見事務を遂行することができます。その場合、次のようなメリットがあります。
〇任意後見契約を締結すると、任意後見受任者は、本人の心身の状態や生活状況を継続的に見守り、本人の判断能力が不十分になったときは、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求し、任意後見監督人が選任されると、本人が亡くなるまで任意後見人として後見事務を継続的に行うことになります。このように任意後見受任者・任意後見人の仕事は長期間にわたることが多いのです。
任意後見受任者・任意後見人が個人の場合、その人が病気・けが・加齢等のために、途中で任務が果たせなくなり、本人をサポートする人がいなくなってしまう可能性があります。
この点、法人が本人との間で任意後見契約を締結した場合、法人自体が任意後見受任者又は任意後見人としての義務を負うことになります。当法人には、複数の司法書士を含む職員がいますから、担当職員が病気等のため任務ができなくなったとしても、他の職員が交替することができ、それにより、長期にわたって切れ目なく、本人のサポートを継続できるのです。
〇当法人は司法書士法人として、後見事務を行うために必要な財産管理や契約等についての専門的な法律知識やノウハウを持っています。
〇当法人は司法書士法人としての職業倫理を守り、公正な立場で、職務を忠実に執行します。

見守り契約

本人の心身の状態や生活状況を見守るための契約を、見守り契約といいます。
当法人と見守り契約を締結すると、本人と定期的に連絡を取ったり、面談したりし、必要に応じて医療従事者や介護ヘルパー等に確認したりして、本人の健康状態や生活状況に変化がないか、見守ります。
本人の判断能力が不十分になっていることが判明し、任意後見人として後見事務を行う必要がある場合には、当法人が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをします。 一人暮らしの方が、いつの間にか、判断能力がなくなったり、動けなくなったりして、自力で生活できなくなっているのに、だれにも気づかれず、孤独死してしまう、といった事態を防ぐこともできます。
当法人では、本人の心身の状態や生活状況などを十分にお聞きし、ご要望に応じて、個別に最適なプランを提案いたします。
気がかりなことがありましたら、お気軽に相談してください。

財産管理等委任契約

任意後見は、将来本人の判断能力が不十分になったときに、財産管理等をサポートするための制度ですから、任意後見契約を締結しても、本人に判断能力が十分ある間は、任意後見受任者は本人の財産管理等を行うことはできません。
そこで、本人が高齢による気力・体力の衰え等のために財産管理などが難しく、サポートを必要とする場合に、任意後見受任者が財産管理等を行う契約が財産管理等委任契約です。

移行型任意後見契約

  1. 任意後見契約の締結と同時に、本人が任意後見受任者(任意後見人になる予定の人)と財産管理等委任契約を締結し、
  2. 本人の判断能力のある間は、財産管理等委任契約に基づいて本人の財産管理等を行い、
  3. 本人の判断能力が低下してきたら、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい
  4. 以後、任意後見に移行して、任意後見受任者が引き続き本人の財産の管理等を行う、ということも可能です。
    この財産管理等委任契約+任意後見契約が、移行型任意後見契約と言われるものです

手続きの流れ

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当法人
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当法人契約内容の作成
お客様

当法人
公証役場にて、公証人が任意後見契約公正証書の作成
(本人、任意後見受任者、当法人担当者が同席)
登記 ※公証人の嘱託により登記されます。
手続き完了

契約締結後

  1. ・ご本人様の判断能力が著しく低下し後見開始が必要と感じたら、裁判所に後見監督人選任の申立を行う。
  2. ・裁判所により後見監督人が選任されて、任意後見業務が開始する。
  3. ・定期的に後見監督人に事務報告書類の提出をする。

まずはお気軽にご相談ください。

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